燕子花(かきつばた)が持つ物語

5月に入りましたね。

美術館巡りが趣味な方は、あの作品が展示される時期だなぁと思うのではないでしょうか。↓

燕子花図|根津美術館 (nezu-muse.or.jp)

※2024年4月28日現在

《燕子花図》は、江戸時代前期の絵師、尾形光琳による六曲一双の屏風作品です。

ここに描かれる燕子花の花は、実は『伊勢物語』第九段の「八橋」の一場面を象徴するモチーフとなっているのです。

自分を役に立たないと者と思い、京を旅立った男(在原業平がモデルとされる)は、三河の八橋にたどり着きます。

八つの橋を渡した、文字通りの八橋という場所は燕子花の名所として知られており、男は目の前に見事に咲く「燕子花(かきつばた)」の文字を含みこんだ歌を詠みます。

らごろも つつなれにし ましあれば るばるきぬる びをしぞ思ふ

京に残してきた妻を想い、旅のわびしさを詠った内容に、同行した人々は感動して涙を流し、持っていた乾飯がふやけてしまいましたとさ…

「八橋」のあらすじはこんな感じです。

様々な絵画を観ますと、八つの橋をわたした八橋と燕子花の花がセットになって「八橋図」を構成するものが多くみられますが、

こうしたモチーフが浸透していく中で、次第に燕子花の花だけでも「八橋」を連想するものとして受け入れられたようです。

尾形光琳の《燕子花図》はそうした様子を物語っている作品であるといえるでしょう。


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