新年は12月から!?江戸の「事はじめ」

12月も早くも一週間が過ぎようとしています。

年末に向かって、お仕事でもプライベートでもバタバタするこの時期、

江戸の昔ではどんなことをしていたのでしょうか?

「お事はじめ」について書かれている文献の一つに、

『絵本江戸風俗往来』(菊池貴一郎、明治38年・1905)があります。

引用すると、以下の通り。

十二月八日をお事初めとす。

例年今日より来年正月の事の初めとて、専らその事に着手す。

勿論世間皆正月の来たるよりその準備をなすより、

是非とも家業はなおさら家事等、武・町ともその事に随わざるを得ず。

(菊池貴一郎 著、鈴木棠三 編・東洋文庫50『絵本江戸風俗往来』平凡社、1965より)

これより、12月8日は、正月という祭日にに向かって、人々が準備に慌ただしく動き出す「お事はじめ」としていたことがわかります。

少しだけややこしい話をしますと、

12月8日と対になる祭日(ほぼ同じ行事)に2月8日があるのですが、

それぞれを「お事始め」「お事納め」と呼び、

それぞれの名称が反対になる場合もあります。

今回に関しては、12月8日を「お事はじめ」とする理屈が以上のようであるとご理解いただければと思います。

正月を迎える準備期間をも「新年」として、心を新たに過ごす、

といったところでしょうか。

さて、『絵本江戸風俗往来』には、このお事はじめに行う風習の一つとして、

家ごとに、目籠(目をあらく編んだ竹かご)を竹竿の先につけて高くあげることを取り上げています。

その出典や意味合いは諸説あるそうですが、

一コマイラストで示した通り、鍬形蕙斎の『略画苑』にて、12月の年中行事の一つに、目籠を高~く持ち上げている様子を「ことはじめ」として紹介していることから、これは江戸のまちの中において一般的な光景であったことが想像されます。

街中も家の中もドタバタ忙しい師走の時期に、

高~くあがった目籠が立ち並ぶさまは、

現代人の私の目から見ると、なんだかのどかな感じがしますが、

当時の人たちにとっては、

「ここから正月がはじまる…!!」

という合図というか、のろしというか…

そういう気合の入るアイコンのような役割も果たしていたのかもしれないですね。


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