暑い日がいつまでも続いたかと思えば、いきなり寒い風がピューピュー吹き出した今日この頃…
秋よ…どこいった…?
そんな寒い中でも頑張っていきましょう、という訳で、
日本美術の掛軸や屏風などで描かれる人物シリーズですが、
今回は、「蛍雪の功(けいせつ の こう)」の故事で知られる孫康(そんこう)を紹介します。
「蛍雪の功」は、苦労して学問を修める様子やその成果をあわらす故事成語として、今でも多少なじみのある言葉なのではないかと思います。
日本絵画においても「蛍雪の功」が描かれた作例がありまして、
有名なところでいうと、江戸時代中期の浮世絵師、鈴木春信による《見立孫康》(リンクはボストン美術館蔵)が挙げられます。
春信の作例では、美人が雪明りに照らされた中で手紙を読む様子を、作品の名前通り、孫康の「蛍雪の功」に見立ててあらわしています。
さて、蕙斎『人物略画式』の孫康図をみてみると、春信《見立孫康》のように建物の描写はなく、
本を読む孫康の前に、雪だるまを思わせるでっかい雪玉が描かれています。
まぁ確かに、これだけ大きな雪玉が目の前にあれば、明るさは十分なのかもしれませんが…
邪魔じゃないのかなぁ…とも思ってしまう(笑)
苦労して勉学に励む様子ですから、孫康本人はいたって真面目だし、
この絵をみる私たちも「孫康を見習って頑張らねば…!」と思う反面、
なんだかクスッとわらってしまう。
鍬形蕙斎『人物略画式』の孫康図は、そんなシュールな魅力があって面白いです。