昨今、あらゆる博物館・美術館・図書館などで、美術資料や古典籍が無料で閲覧・ダウンロードができるようになっています。
これは、研究者だけではなく、一般の美術愛好者も嬉しいはず…!
でもデータが多すぎて、何を観たら良いのかわからない…!
そんな方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで一コマ美術史では、データベースなどでweb上で気軽に観られる作品の中から、個人的に魅力的に感じるものをゆるく紹介するなんて事もしてみたいと思います。
今回はこちら!『手拭合(たなぐいあわせ)』

さて、『手拭合』は、以下のデータベースで閲覧することができます。
↓国立国会図書館デジタルコレクション 『志やれ染手拭合』
https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/2537594/1/1
↓国書データベース 『手拭合』
https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/200008234/
↓所蔵先の一つである国文学資料研究所のwebサイトでは、解題も読むことができます。
https://www.nijl.ac.jp/search-find/articles/gallery/200611.html
※いずれも2023年9月23日現在。
今回描いた部分はこちら。

(国立国会図書館デジタルコレクションより)
描いたのは、一番左の図案「篠塚染」です。
名前の横に描いてある「貫目三拾八(三十八)貫余」は、重さの単位で、現在の単位に換算すると約140kg…手ぬぐいではありえない重さ…
先を読んでみると「事は太平記に委しけれはこヽにしるさす」とあります。これはつまり、詳細は太平記に託すからここでは省略しますよ、という意味。
そう、この図案は『太平記』の登場人物の一人、篠塚伊賀守のエピソードを元にしているのです。
篠塚伊賀守こと篠塚重広は、怪力で知られる武将。
『太平記』における篠塚伊賀守の最後の戦いは、伊予国の世田城で起こりました。
世田城に籠城していた篠塚伊賀守ですが、戦いには敗れて自ら隠岐島に落ち延びていくこととなります。
城を出た瞬間、まぁ沢山の兵からあらゆる攻撃を受けるのですが、篠塚伊賀守はものともせず突き進んでいきます。(詳しい様子は、私も『太平記』の記述に託します!)
とうとう船に辿り着いた篠塚伊賀守は、重い碇を一人であっという間に持ち上げて、船の中に乗り込んで寝てしまいます。
船の舵取りたちは、その勇猛な様子に驚きながら、篠塚伊賀守を隠岐島まで送り届けてあげたとさ。
…というのが、篠塚伊賀守の有名な場面です。いわゆる武勇伝ですね。
『手拭合』に書いてあった「貫目三拾八貫余」は、碇の重さであるということがわかります。
このように図案の元ネタ、例えば歌舞伎の演目や『太平記』のような日本の古典文学などがベースにあることがわかると、一つ一つの図案の面白さが一層際立つのが『手拭合』の面白いところです。
本書を読んだ人々は、それぞれの図案をみて
「おお、〜のこの場面を元にしたのか!上手く図案にしたなぁ」
と楽しんだことでしょう。
図案を作る人は勿論、図案を読み解く人にも豊かな教養が求められる本。
こうした本が版本となって流布するところに、江戸時代の文化の豊かさが感じられます。
是非全部の図案をチェックして、わかる図案、読み解けそうな図案を探してみてください!
【参考文献】
・国文学研究資料館 所蔵資料紹介 名品ギャラリー 手拭合 (たなぐいあわせ)
https://www.nijl.ac.jp/search-find/articles/gallery/200611.html
・「太平雑記」インデックス 篠塚伊賀守・その3 伊予世田城から魚島に渡る
http://muromachi.movie.coocan.jp/taiheiki/iganokami3.html
※ウェブページの閲覧日は2025年5月25日

